アスリートの糖質摂取の考え方・パート12
・はじめに
・糖質とたんぱく質を同時摂取する意義
・おわりに
本文
・はじめに
アスリートの糖質摂取の考え方もいよいよ最終回になります。これまで全12回の糖質摂取の集大成となります。最終回はその他の栄養素との組み合わせの意義について取り上げたいと思います。
前回は糖質の質を高めるために糖質の中で複数の糖類をとることを紹介しました。今回はエネルギー産生栄養素(三大栄養素)の中でもたんぱく質を同時摂取する意義についてご紹介します。栄養素は組み合わせることで様々な相乗効果が得られるということを学んで頂ければと思います。
・糖質とたんぱく質を同時摂取する意義
さて、最近は生理学的な観点の話が中心となっていたので、糖質摂取の目的を忘れていないでしょうか。糖質は競技をする上でとても大切なエネルギー源になります。では、体内で糖質はどのような形で蓄えらえていたでしょうか。
ここまでコラムを読み進めている方はすぐに答えがでてきたでしょうか。
答えは・・・
「グリコーゲン」です。
すなわち、運動前であれば、どれだけグリコーゲンを体内に蓄えておくか、運動後であれば、どれだけ速やかにグリコーゲンを回復させるかが、選手にとっては重要なことになります。
Ivy JLら(2002)では、糖質とたんぱく質の同時摂取と糖質の単独摂取(高糖質及び低糖質)において、筋グリコーゲンの回復を実験的に観察しています(図 参照)。糖質とたんぱく質はそれぞれ4kcalとされており同等のエネルギーを生み出す栄養素です。したがって、糖質(80g)とたんぱく質(28g)のグループと高糖質(108g)のグループは同じエネルギー量であることが分かります。しかし、この研究の結果では、糖質とたんぱく質を同時に摂取したグループで糖質単独摂取のグループに比べて、筋グリコーゲンの貯蔵量が高まったことが示されています。
すなわち、糖質とたんぱく質を同時に摂取するということは、筋グリコーゲンの回復という観点で優れているということになります。
・おわりに
このように複数の栄養素を組み合わせることで様々な相乗効果が得られるということは非常に面白い栄養学の不思議ともいえます。同様にこの効果は、たんぱく質の筋タンパク質合成を高めるという観点でも相乗効果がみられます。この筋タンパク質合成の効果についても、別の機会に紹介できればと思います。
前回に続き、今回も複数の栄養素や物質を摂るべきというお話をしました。今回は、糖質とたんぱく質です。糖質は主食、果物などに多く含まれており、たんぱく質は主菜に多く含まれます。やはりというべきか、最後は、バランスのとれた食事、この一言に尽きるのかもしれません。