アスリートの糖質摂取の考え方・パート7
目次
・はじめに
・運動中の糖質摂取を考える
・おわりに
本文
・はじめに
前回から引き続き、糖質摂取の話題を続けたいと思います。
すでにパート7と糖質摂取も奥が深いと感慨深くコラムを作成しています。これまでの糖質摂取のタイミングとして運動前後を取り上げてきました。しかし、タイミングはこれだけなのでしょうか。
スポーツ栄養のタイミングの考え方として、運動前・中・後と分けて考えます。すなわち、運動中ということが抜け落ちているということになります。今回は、運動中の糖質摂取について取り上げたいと思います。
・運動中の糖質摂取を考える
運動中の糖質摂取といえば、思いつくものがエネルギー補給だと思います。古い研究にはなりますが、Coyle, et al.(1986)では、炭水化物を含む飲料と含まない飲料を20分毎に摂取して運動を継続した場合の血糖値の変化を調べました。その結果、炭水化物を含む飲料では運動初期から血糖値は変化せず、運動の持続時間も長かったという報告をしています。すなわち、運動中に適宜エネルギー補給をすることは「運動の持続時間を延長する」という運動中のエネルギー補給の意義を証明した代表的な研究といえます。
そのほかにも古い研究にはなりますが、Poortmans JR (1988)は、運動中の糖質摂取の有無と筋肉の分解の関係を調べています(画像参照)。この研究では、糖質摂取群では筋肉分解の指標の一つとなる血中の尿素窒素濃度が糖質非摂取群に比べて、低い(= 筋肉の分解を抑える)ということを報告しています。この研究の後にも同様の研究がなされ、運動中に摂取した糖質をエネルギー源とすることで、筋肉のたんぱく質を分解してエネルギーに換える必要がなくなるため、筋肉の分解を抑えることができるという発見に至りました。
・おわりに
このように運動中に糖質摂取を行いエネルギー補給をすることは、単に運動の持続時間を延長するような持久能力に関連するだけでなく、筋肉が必要となる瞬発的な競技においても重要であることが古くから知られています。
皆さんは運動中の栄養補給をどう考えていたでしょうか。単に運動中のエネルギー補給ができれば良いと考えていませんでしたか。そのエネルギー補給が筋肉の分解を防ぐという大事な役割があるということをこの機会に再認識していただけると幸いです。