アスリートの糖質摂取の考え方・パート6
目次
・はじめに
・糖質補給とインスリンの働き
・おわりに
本文
・はじめに
前回から糖質摂取の「タイミング」についてお話をすすめています。糖質摂取のタイミングといえば、「運動前」というイメージが強いかもしれませんが、あえて今回は運動後に着目してお伝えをしています。
さて、前回のおさらいです。糖質摂取をすると血糖値が上昇するため、血糖を組織に取り込むため、「インスリン」というホルモンが分泌されることは、広く知られていると思います。では、「インスリン」の功罪について、今回はお話したいと思います。
・糖質補給とインスリンの働き
「インスリン」の主要な働きは、血液中の糖質(血糖)を組織(筋肉や肝臓)にグリコーゲンとして蓄えるように指令を出すホルモンです。この血糖調整を行う「インスリン」は、ホルモンの中でも上位に位置するホルモンで、分泌を増やす方法はほとんどありません。すなわち、血糖値を上げるということが、数少ない「インスリン」を放出させる方法といえます。
では、「インスリン」には血糖調整以外の働きはないのでしょうか。
答えは、「No!」です。
「インスリン」は、血糖を組織に取り込むというよりも、血中の様々な物質を組織に取り込む作用を高めることが知られています。例えば、古くから運動後にはたんぱく源と糖質を一緒に摂ると効率よく筋肉がつくといわれていましたが、このたんぱく源を筋肉に多く取り込むようにするというのが、まさに「インスリン」の二次的な作用といえます。また、取り込みを促進することからも速やかな回復が望まれる練習と練習や試合と試合の間隔が短いリカバリーに対しても「インスリン」を可能な限り放出させるというのは、有効な栄養補給戦略といえます。
一方で近年警鐘が鳴らされているのは、筋肉へのたんぱく質の取り込みを増加させるだけではなく、血中の遊離脂肪酸(脂質)を体脂肪(貯蔵できる脂肪)として貯蔵を増加させてしまうという点があります。「インスリン」はこのように様々な物質を組織に取り込むことを増加させてしまいます。
例えば、減量中のアスリートやダイエット中の一般人の方は、リカバリーを優先するがあまり、無駄な体脂肪をつけてしまうということがないように血糖値コントロールも今後のスポーツ栄養サポートの際の課題になるかもしれません。
・おわりに
運動直後の糖質摂取とインスリンの働きについて整理することができたでしょうか。人の身体はまだまだ未知の領域がたくさんあります。ホルモンひとつをとっても様々な作用がおこり、良いも悪いも目的次第では存在します。
今後ますます、より専門的な栄養管理が必要になった場合、栄養士をはじめとする栄養の専門家が適切なアドバイスができるような体制作りや知識のブラッシュアップが進んでいけばと思います。