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アスリートの糖質摂取の考え方・パート2

糖質の考え方2 (002)

目次

・はじめに

・糖質を身体に蓄えておく大切さ

・おわりに

 

本文

・はじめに

 前回は糖質摂取が「正義」か「悪」かという難題をテーマにお話をしました。

 結論は、糖質摂取には個人差があるため、どちらにも軍配は上がらなかったのですが、少なからず、体質改善には時間がかかること、成長期の選手には不向きではないかという考えから、自分の指導現場では、オーダーがない限り糖質は「正義」という観点で助言をしています。

 例えば、メタボリックシンドロームの改善や大人の健康増進現場では、「悪」という視点を使う場合もありますので、全てを否定しているわけではないことはご承知おきください。

 

 さて、「正義」という結論ありきで、今回からアスリートは「糖質」をしっかりと摂取することが良いということを紹介していきたいと思います。

 

・糖質を身体に蓄えておく大切さ

 糖質は体内では「グリコーゲン」という形で貯蔵されています。「グリコーゲン」が体内に多くあればどのようなメリットがあるのでしょうか。Kirendell DT(1993)のサッカー選手を対象とする先行研究では、体内のグリコーゲン量が多く貯蔵されていた選手ほど、1試合の中での移動距離、走行距離が長かったことが報告されています。すなわち、練習前、試合前に、体内グリコーゲン量を十分に保持することで、その練習、試合でのパフォーマンスが向上する可能性があり、練習の質の向上は、それだけ能力を伸ばすことに繋がります。

 

 では、グリコーゲンを多く貯蔵するためにはどのようにすれば良いのでしょうか。まず、グリコーゲンを貯蔵する場所ですが、大きく分けて2箇所になり、一つ目は「肝臓」、もう一つが「筋肉」になります。通常、成人した場合、「肝臓」の大きさに個人差はあまりなく、グリコーゲンを多量に貯蔵しようと思えば、筋肉量を増やすことが有効であるのはいうまでもありません。筋肉=パワー発揮と考えている人も多いかもしれませんが、実は、持久力を高めるためにも一定量の筋肉が必要ということです。

 筋肉量がある程度高まってくると、次に重要なことが、材料となる「糖質」を摂取し、グリコーゲンを貯蔵あるいは、回復させることになります。試合前によく使用される方法は、ご存知の通り、「グリコーゲンローディング」という方法がありますが、「グリコーゲンローディング」にも功罪はありますので、そちらは別の機会にお話しできればと思います。それよりも日常的にどの程度使った分を回復(リカバリー)させるか、これがキーポイントになりますので、次回からは、日常の糖質の回復についてお話したいとおもいます。

 

・おわりに

 この2回で、糖質摂取のメリット、デメリットについて触れてきました。最近は「糖質制限」なども一般的に知られてきました。自分自身が不安なことは、知識もなく真似てしまうことです。自分に合った方法であれば、成功するかもしれませんが、そうでない場合はパフォーマンスだけでなく、健康面を崩す可能性もあることを理解しておいてもらいたいと思います。

 

 正しい情報を整理し、自分にあった方法を見出してもらえればと思います。健康に良い=競技能力向上でもなく、逆に競技能力向上のために健康に悪くなるというのもまた本末転倒・・・糖質摂取の難しいところです。現場栄養士として、研究者として、こんなに面白い栄養素はないと思いつつ、こちらをご覧の皆様には、正しい情報を伝えていく責任を噛み締めて、今回のブログを締めたいと思います。

2018年10月04日 09:30

アスリートの糖質摂取の考え方・パート1

目次

・はじめに

・糖質は正義か?悪か?

・おわりに

 

本文

・はじめに

 最近は、身体づくりの主役であるたんぱく質摂取についてお話をしてきました。これまでにもお伝えしたことになりますが、身体づくりのためには、身体づくりの材料のほか、身体を動かすためのエネルギー源が十分に摂取できているかが重要になります。

 今回からは、身体を動かすエネルギー源の中心となる糖質に焦点を当て、糖質の必要性についてお話をしていきたいと思います。

 

・糖質は正義か?悪か?

 最近は、この議論が専門家の中でも真っ二つに別れており、色々な講習会でお話をしても栄養に関心がある指導者や保護者の方から質問で聞かれます。

 

 糖質の必要性を話し始める前に根本的なこの議論にお答えしなければ、糖質について語ることはできないでしょう。

 では、気になる答えについてですが、正直にお答えにすると、「わかりません!」。

 

 無責任と感じた方もいるかと思いますが、今の科学的なエビデンスで言えば、明確な回答がないというのが実際のところです。

 エビデンスという観点でお話をするならば、個人差があるので、良いか、悪いかは個人で判断をして、個人の責任で色々と自分にあった方法を選んでもらえればと思います。

 自分の講習会の中では、良い、悪いは伝えず、自分で考え、選択することの大切さを伝えて、それぞれの方法論の注意点だけをお伝えしています。

 

〜糖質は「正義」か?〜

 では、糖質が「正義」の場合はどのように考えるのでしょうか。エネルギー源になる栄養素は、「糖質」、「脂質」、「たんぱく質」があるわけですが、「たんぱく質」は身体づくりの材料にしたいわけですから、エネルギー源にしたくない、「脂質」は有酸素性のエネルギー源として爆発的なエネルギーとして不向きかつ、「脂質」をエネルギー源とするためには、「糖質」由来の物質が必要なため、「糖質」はエネルギー源としても「脂質」のエネルギー源として必須であるから、糖質制限はするべきではないという考え方があります。

 さらに、「糖質」を摂取した際には、「インスリン」という血糖調整ホルモンが分泌されます。「インスリン」は血中の様々な栄養素を組織中に取り込むことを刺激します。そのため、リカバリー(回復)をするためには、必須のホルモンであり、疲労回復のためには「糖質摂取」は必須であると考えられています。

 多くのスポーツでは、今現在もこの考え方が主流であり、国際オリンピック委員会を始め、多くのスポーツ栄養のガイドラインで、糖質摂取量は十分に確保に努めるべきであると記載されています。

 

〜糖質は「悪」か?〜

 上記を見ると、そもそもなぜ、「糖質」は悪かという議論が出てきたのでしょうか。古くを言えば、糖尿病の病態改善のための食事が「糖質制限食」です。この糖質制限食がいつからかスポーツ界にも応用されてきたのが最近の現状です。有名なアスリートとしてはサッカー日本代表の長友選手でしょう。「ケトン体」をエネルギー源として利用して、持久能力がこれまで以上に改善されたと注目をされました。「ケトン体」とは「脂質」からできる代謝産物で、身体が飢餓状態(血糖値が下がってきたとき、空腹時)の時にエネルギー源とするために血中に増えてくる物質です。すなわち、体内に豊富にある体脂肪をエネルギー源とするため、体脂肪を増やさないという観点でもアスリートに向いているとされています。では、脂質を燃焼するために必要な「糖質」由来の物質はどうしているのかというと、「糖質制限」と言いつつも完全に除去するのではなく、最低限必要な回復をして、体内のグリコーゲンから最低限賄える状況を作ろうと考えています。

 さらにこの考え方には続きがあり、先ほど紹介した「インスリン」ですが、血中の様々な栄養素を組織内に取り込むため、血中脂質も体脂肪を増やす原因になるため、必要以上に「インスリン」を分泌しなくて済むという考えもあります。

 過度な「糖質制限」は推奨されませんが、この「ケトン体」を利用できる身体に変えていこうとアスリートの間でも流行の兆しが見えるのが、糖質を「悪」とする考え方といえるでしょうか、全面的な「悪」ではありませんが。

 

・おわりに

 細かな研究を出していくときりがありませんが、このように糖質摂取については議論が真っ二つに別れているところになります。

 これまで長くスポーツ現場に携わってきましたが、結論として、自分の指導現場では、まだ糖質は「正義」として活動をしています。もちろん「悪」の否定はしませんし、「糖質制限食」に関する指導もオーダーや必要に応じて指導することもあります。

 しかし気をつけなければいけないことは、少なくとも万人に「糖質制限」は評価できるものではないこと、体の成長が止まっていない選手には少なからず不向きではないかと推測しています。

 

 自分で学び、考え、選択するという行動こそが、一流のアスリートだと思います。一番危険なことは〇〇選手がやっているから自分もやってみようと若い選手が正しい知識もなく挑戦してしまうことです。

 是非、挑戦する前に正しい情報収集をしていただければと思います。

2018年09月20日 09:30