アスリートの糖質摂取の考え方・パート2
目次
・はじめに
・糖質を身体に蓄えておく大切さ
・おわりに
本文
・はじめに
前回は糖質摂取が「正義」か「悪」かという難題をテーマにお話をしました。
結論は、糖質摂取には個人差があるため、どちらにも軍配は上がらなかったのですが、少なからず、体質改善には時間がかかること、成長期の選手には不向きではないかという考えから、自分の指導現場では、オーダーがない限り糖質は「正義」という観点で助言をしています。
例えば、メタボリックシンドロームの改善や大人の健康増進現場では、「悪」という視点を使う場合もありますので、全てを否定しているわけではないことはご承知おきください。
さて、「正義」という結論ありきで、今回からアスリートは「糖質」をしっかりと摂取することが良いということを紹介していきたいと思います。
・糖質を身体に蓄えておく大切さ
糖質は体内では「グリコーゲン」という形で貯蔵されています。「グリコーゲン」が体内に多くあればどのようなメリットがあるのでしょうか。Kirendell DT(1993)のサッカー選手を対象とする先行研究では、体内のグリコーゲン量が多く貯蔵されていた選手ほど、1試合の中での移動距離、走行距離が長かったことが報告されています。すなわち、練習前、試合前に、体内グリコーゲン量を十分に保持することで、その練習、試合でのパフォーマンスが向上する可能性があり、練習の質の向上は、それだけ能力を伸ばすことに繋がります。
では、グリコーゲンを多く貯蔵するためにはどのようにすれば良いのでしょうか。まず、グリコーゲンを貯蔵する場所ですが、大きく分けて2箇所になり、一つ目は「肝臓」、もう一つが「筋肉」になります。通常、成人した場合、「肝臓」の大きさに個人差はあまりなく、グリコーゲンを多量に貯蔵しようと思えば、筋肉量を増やすことが有効であるのはいうまでもありません。筋肉=パワー発揮と考えている人も多いかもしれませんが、実は、持久力を高めるためにも一定量の筋肉が必要ということです。
筋肉量がある程度高まってくると、次に重要なことが、材料となる「糖質」を摂取し、グリコーゲンを貯蔵あるいは、回復させることになります。試合前によく使用される方法は、ご存知の通り、「グリコーゲンローディング」という方法がありますが、「グリコーゲンローディング」にも功罪はありますので、そちらは別の機会にお話しできればと思います。それよりも日常的にどの程度使った分を回復(リカバリー)させるか、これがキーポイントになりますので、次回からは、日常の糖質の回復についてお話したいとおもいます。
・おわりに
この2回で、糖質摂取のメリット、デメリットについて触れてきました。最近は「糖質制限」なども一般的に知られてきました。自分自身が不安なことは、知識もなく真似てしまうことです。自分に合った方法であれば、成功するかもしれませんが、そうでない場合はパフォーマンスだけでなく、健康面を崩す可能性もあることを理解しておいてもらいたいと思います。
正しい情報を整理し、自分にあった方法を見出してもらえればと思います。健康に良い=競技能力向上でもなく、逆に競技能力向上のために健康に悪くなるというのもまた本末転倒・・・糖質摂取の難しいところです。現場栄養士として、研究者として、こんなに面白い栄養素はないと思いつつ、こちらをご覧の皆様には、正しい情報を伝えていく責任を噛み締めて、今回のブログを締めたいと思います。