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アスリートのたんぱく質摂取の考え方・パート4

はじめに
 前回はたんぱく質の種類と吸収速度の違いについてお話しました。
 吸収速度が速い=良質のたんぱく質ではありません。最近は、吸収速度の違いを利用して摂取タイミングを考えることがスポーツ現場でも浸透しています。
 前回は吸収速度が速いたんぱく質は練習後の回復に優れているというところで話が終わりましたので、今日は吸収がゆっくりなたんぱく質を話題にしたいと思います。 

目次
・タンパク合成を高める食事とは?〜吸収速度の違い②〜
・おわりに
 
◆タンパク合成を高める食事とは?〜吸収速度の違い②〜
 まずは前回のおさらいからスタートします。
 吸収がゆっくりなたんぱく質はどのようなたんぱく質があったでしょうか?
 
 代表的なものは植物性たんぱく質の一つである大豆たんぱく質や小麦たんぱく質があります。
 
 植物性の食品は一般的に吸収が悪いというネガティブなイメージを持たれがちです。しかし、前回お話をした通り、吸収がゆっくりな場合、血中の必須アミノ酸濃度を維持することに優れているという側面があります。
 吸収が早いたんぱく質が120分で安静時と同程度になるのに対して、吸収がゆっくりなたんぱく質は240分で安静時と同程度と概ね2倍の血中アミノ酸濃度の持続力があります。
 
 すなわち、血液中に長く筋肉の材料が流れている状態ということです。食事のタンパク合成の持続時間はそう長くはありませんが、タンパク合成速度を高める方法は食事だけでなく、運動や睡眠時に放出される成長ホルモンの影響があります。
 
 運動のタンパク合成への刺激は数時間でピークは過ぎますが、安静時より高い状態は24時間以上続くといわれていたり、成長ホルモンは深い睡眠時にピークを迎えたりすることは知られています。
 重要なことは、こういった合成速度が高まっている時間帯に材料となるアミノ酸が血液中に多い状態を作らなければいけません。合成速度が高まっても材料がなければ筋肉を効率よく回復、作ることはできません。
 
 例えば深い睡眠に入るまで2時間(=120分)かかったとすれば、寝る直前に吸収の早いたんぱく質を摂取しても、成長ホルモンが出る頃には血液中の必須アミノ酸濃度は安静時と同程度になってしまいます。一方で、吸収がゆっくりなたんぱく質であれば、血液中の濃度が維持できているというメリットがあるわけです。
 
 このように吸収が早い=良質ではないということが、最近の研究でも議論されています。また寝る前だけでなく、例えば、運動前に吸収がゆっくりなたんぱく質を摂取しておくことで、血中のアミノ酸濃度が維持できることから、筋タンパクの分解を抑制することも期待できます。
 
◆おわりに
 吸収速度が早ければ早いほど良いは昔話になっています。
 皆さんは、動物性たんぱく質ばかり食べていればいいと勘違いしていませんか。食物はこれだけ食べていれば良いというものは存在しないと思います。
 それぞれの食物の良いところ、悪いところがあり、それらの特徴を十分に理解した上で目的にあった効果を最大限に高める努力をしなければならないのかもしれません。
 
 アスリートの世界はますます高度化しており、紙一重の差が勝敗を分ける時代になっています。
 最後の差をどのように埋めていくのかは、これを読んでいる皆様にかかっているのかもしれません。
 

2018年07月26日 09:30