アスリートのたんぱく質摂取の考え方・パート2
はじめに
前回はタンパク合成を高めるためのたんぱく質の1日の摂取量についてお話をしました。現在の日本人の食事摂取基準と同様に、1日あたりのたんぱく質量は多くの教科書、参考書でも紹介されています。
では、例えば1食で多くのたんぱく質量を摂ってしまうと、他の食事では抑えなくてはいけないのでしょうか?
その疑問についてお答えしたいと思います。
目次
・タンパク合成を高める食事とは?〜1回の量を考える〜
・おわりに
◆タンパク合成を高める食事とは?〜1回の量を考える〜
前回に続き、今回もエビデンスに基づき、たんぱく質量を紹介したいと思います。例えば、夕食にご飯400gとハンバーグ200gを食べたとします。だいたいどのくらいのたんぱく質量をとることができるでしょうか?
答えはおよそ50gになります。
その他のおかずやソースはもちろん、乳製品をとったりもしていません。すなわち、アスリートは1食で体重1kgにつき1g程度は食べることは容易なこととも考えることができます。
では、この食べ方は科学的に見ると効果的でしょうか。もっと効果的な食べ方はないのでしょうか?
ここで紹介したい研究がMoore DRらが2009年に発表した1回のたんぱく質量とタンパク質合成に関するデータです(図 参照)。
この研究では、たんぱく質量を徐々に増やしていった際のタンパク質合成がどのように変化するかを分析しています。その結果、1回20gと40gでその差がほとんどなくなることが報告されました。
すなわち、1回で20〜40gのたんぱく質を摂取することで、十分な刺激を与えることができることを発見したわけです。ということは、前述の食事でも問題はないのですが、どうせ食べるなら、40gと20gの2回に分けてとることで、タンパク合成の刺激を1日に2回起こすことの方がより筋肉量を増やす可能性が広がるのではないでしょうか?
例えば夕方に部活動があるならば、部活動が終わった直後に20g程度のたんぱく質を含む補食を食べておき、自宅に帰ってから少し休んで40gのたんぱく質を含む食事を食べる。こういった取り組みをすることが勧められます。
◆おわりに
研究は日進月歩で進んでいます。この研究も現在ではさらに進歩しており、高齢者では若年者よりタンパク合成の反応が悪いことが発見されました。
1回の食事が十分に食べられないことで、身体への刺激が弱く、筋肉量を減らしたり、筋肉量を増やすことを妨げたりすることも知られています。1日の総量が十分だと満足するのではなく、1回1回の食事を大切にして、適度な刺激を多く与えることが、タンパク合成の効果を最大限に高めることができると思われます。
一度、現在の食べ方を見直してみてはいかがでしょうか?