アスリートのたんぱく質摂取の考え方・パート1
はじめに
最近は、「合成」と「分解」を主要なテーマに取り上げています。前回は(基礎栄養学講座パート12)「合成」の刺激(合成を高めること)についてお話をしましたが、今回は「合成」を高める食事について取り上げたいと思います。
特にアスリートは筋肉量を増やしたいと思っているはずです。今回は特に筋肉量と密接に関わるタンパク合成に焦点を当てたいと思います。
目次
・タンパク合成を高める食事とは?〜1日の摂取量を考える〜
・おわりに
◆タンパク合成を高める食事とは?〜1日の量を考える〜
タンパク合成を高めるために重要なのは食事のたんぱく質を十分に摂取することです。一般人より筋肉の損傷が激しいアスリートでは、一般人より多くのたんぱく質を摂る必要があることは言うまでもありません。
では、摂れるだけ摂ればいいのでしょうか??
答えは「No!」です。「合成」と「分解」の関係と同様に過度な栄養補給は、体から排泄しようという動きが活性化してしまい、余分なものを捨てるだけでなく、必要なものまで損失する恐れがあります。さらにたんぱく質は尿からの排泄がほとんどで、過剰なたんぱく質摂取はカルシウムをはじめとするミネラルの損失にも繋がるので、摂れば摂るほど良いと言う考え方は持たない方が良いでしょう。
これまでもたんぱく質の摂取量については多くの研究がなされています。Tamopolsky MAらが1992年に発表したたんぱく質の摂取量と体内蓄積量の関係を示した研究は、現在でも指標の一つとして使われています(図 参照)。
この研究によると、運動をする人は体重1kgにつき1.4〜2.4gのタンパク質摂取量を摂ることで体内蓄積量が増えることを報告しています。しかし、2.4gでは、たんぱく質は本来、エネルギー利用の少ない栄養素であるにもかかわらず、エネルギー利用が増えていることから、2.4gよりも少ない量で足りると考えられています。
この研究が発表された後も、種目別のたんぱく質量が研究され、現在では体重1kgにつき1.5〜2.0g/日が一般的なアスリートの摂取量と考えられています。体重50kgであれば1日で75g〜100gの摂取が推奨されるということです。
◆おわりに
細かな研究を出していくときりがありませんが、概ねこの範囲に収まるのが現在のたんぱく質の摂取量の考え方です。一方、成長期であるジュニア選手では競技に加え、成長に必要なたんぱく質を摂る必要があるとされ、成人より10%程度増やすと良いという報告もあります。しかし、体重1kgにつき2.0g以上を摂る必要はないと思われます。
さて、今回はエビデンスに基づく観点でたんぱく質量について復習しました。しかし、最近では別の視点も持たれていますので、そちらは次回のブログで紹介したいと思います。